FOOTWORKS
ORIGINAL SANDALS
身体から熱を追い出したいこんな季節は、シャツの袖は捲り上げられ、パンツの丈は短くなる。足元は素足にサンダルで良いけれど、できれば洋服との居場所が近くて静かなものがいい。そんな繰り言を暑さのせいにして、今回も気になったものに少しばかり触れてみます。どこか気安かったり、少し気怠かったり、やたらと活動的だったりするサンダル。涼しさを得る代わりに、自分から離れていく気配もあって、そこに待ったをかけたくなるのも正直なところです。
数年前、移転前のアトリエに付き添いでお邪魔したのが最初のご縁だったと思います。オーダーメイドという言葉にはいつも憧れと畏れが同居しますが、その時もそこで何を話したか、一歩下がって緊張していただけだったことを覚えています。その後、経験者に背中を押していただき、思い切ってインソールを作製してもらうためにアポイントを取りました。そこで彼の仕事と哲学を目の当たりにすることになるのですが、顧客の姿勢や歩行時の癖を分析し、最適にカスタマイズしたインソールで姿勢や歩行を改善するというにわかに理解しがたいその手技の妙を、後日、自身の足でしみじみと実感することになります。
不要なものを削ぎ落として純粋に「道具」を作り上げていく「職人」としての方法論は、顧客の要望から生まれた「夏場にも使えるインソールとしてのサンダル」というひとつの解答へと結実していきます。数多くのオーダーで培った技術と知見を活かし、最大公約数的なバランスとなるよう調整した、いわば「オーダーメイド入門」であり、同時にFOOTWORKSという哲学へのエントリーモデルともいうべきそのサンダルの構想を伺った時は「ようやくお店の足元が定まった」と思ったものです。無駄がなく質実剛健にしてブランドルックに採用されるほどに整った表情。初めて目にした時、すぐに長いお付き合いを予感しました。GUIDI社のレザーによる堅実にして品性のある仕上がりは、まさに求めていたものでした。
突っ掛け履きはNGですが、踵方向斜め下にストラップをしっかり絞めれば本領発揮です。ソックスとの合わせも良いですが、裸足なら一層しっかり固定されますし、インソールが革製である理由がはっきり分かります。わずかに前傾し、土踏まずにソールが触れている感覚は脱いだ後でも心地良く、他のサンダルとは長時間履いた際の疲労感に明確な違いがあると思います。何より取り扱わせていただいている商品との相性が非常に良く、今時期の足元は綺麗目・カジュアル問わず全面的にお任せという感じです。個人的には立ち仕事の場面で実感することが多く非常に助かっています。今年からストラップの幅やソール形状がより細やかに変更され更に使い勝手が良くなっていますので、そのあたりも嬉しいですね。
先日、南青山の新しいアトリエにもお邪魔してきました。ドイツ近代建築を思わせるソリッドな空間に設えられた、ハイコンテクストな調度・蒐集品。そこで語られる言葉は、歩き方という人の「個性」を掴まえ裸にするようで、しかし示される道筋は極めて適切です。そのまま彼のものづくりに対する姿勢を表しているようで、ふと自分の居住まいをも正されるような、そんな思いがしました。「Less is More」 敬愛する建築家の言葉を体現するが故に、顧客は彼に信頼を寄せ、彼の指し示す道を歩むのだろうと思います。
真っ直ぐ立って真っ直ぐ歩くという簡単なようで難しいこの行為を、彼は車の前輪に例えています。前輪である足を動かすのは人の脳であり「履いて整う」サンダルと言えども、歩行というハンドリングを意識せずしてその真価は発揮されません。「望んだ居場所までまっすぐ歩いてください」サンダルにそう言われている気がします。
森 健 （もり たけし）｜インソールの第一人者である父に師事、単身ドイツ留学後2011年に独立。南青山にて現アトリエを構え、オーダーメイドのインソールを手掛ける。身体を支える土台であり、日々の生活において最も重要な部分である足をケアすることで、重心の偏りや歪みのない本来あるべき姿勢へと整えていく。真摯なカウンセリングにより一人ひとりの足型・重心を分析し、一過性でない、根本的な不調の改善に取り組んでいる。「正しく立って正しく歩く」ための道具であるインソールを作製、2021年よりレディメイドのサンダルを展開。歪みのない立ち方、歩き方を提案する。
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- 22.0｜22.5｜23.0｜23.5｜24.0｜24.5｜25.0｜25.5｜26.0｜26.5｜27.0｜27.5 cm